第7話:ことばにしない配慮:余白のコミュニケーション
機微(きび)のいろ:第7話
ことばにしない配慮:余白のコミュニケーション
日本人の会話には、多くの“ことばにしない配慮”が含まれています。沈黙や表情、間といった非言語的な要素が、相手への思いやりを伝える手段となるのです。
遠まわしな表現が伝える“気づかい”
直接的な言葉を避ける傾向がある日本語では、「少し考えさせてください」や「検討してみます」などの曖昧な表現が多用されます。これは相手を否定したり、傷つけたりすることを避けるための配慮であり、“言わない優しさ”とも言えるでしょう。
察する文化と“ことばの余白”
日本では、「全部は言わないけど伝わる」ことが理想とされる場面が多くあります。それは相手が察してくれるという信頼に基づいています。この“ことばの余白”を埋めるのは、言外の気持ちや空気であり、それが機微として働きます。
無言の反応が伝える気持ち
目をそらす、少し笑う、うなずく。こうした非言語的な反応も、日本人にとっては立派な返事になります。ときには言葉よりも深く気持ちが伝わることもあります。
外国人との誤解もここから
こうした“ことばにしない配慮”は、文化の違いから誤解を招くこともあります。外国人にとっては、「何も言われなかった」ことが無関心と感じられてしまう場合もあります。
総括:言葉にしない優しさ
日本語の美しさのひとつは、この“言葉にしない優しさ”にあります。相手を尊重し、自分の意見を押しつけない。沈黙の裏にある思いやりこそが、機微の本質なのかもしれません。