第8話:“あいまい”に宿る美しさ:日本語表現のゆらぎ
機微(きび)のいろ:第8話
“曖昧”に宿る美しさ
日本語は、意図的に意味を曖昧に保つことがあります。「たぶん」「もしかすると」「それなりに」などの表現は、断定を避け、聞き手に余白を与えます。
断言しない優しさ
明確に言いきらないことで、対立や衝突を避ける——これは日本人の知恵ともいえます。「いいかもしれないですね」「考えておきます」などの表現は、本音を隠すためではなく、相手との関係を壊さないための気遣いです。
余白が想像力を育む
曖昧な表現には、受け手の想像力を刺激する力があります。すべてを説明するのではなく、“あえて残す”ことで、共感や発見が生まれるのです。
翻訳しづらい美の感覚
日本語の曖昧さは、他国語に翻訳しづらい特徴です。「よろしくお願いします」など、直訳が難しい言葉は、文脈や関係性の理解が必要になります。
総括:“あいまい”の中にある機微
曖昧というと否定的に聞こえることもありますが、そこには日本人の深い美意識と人間関係への配慮が宿っています。明言しないからこそ伝わる、そんな日本語の“ゆらぎ”に、わたしたちは耳を澄ませたいのです。